川田畳製作所

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畳の湿気対策とダニ、カビを発生させないための対処法

2022.09.01

空間の湿度を調整しながら快適な環境を作ってくれる機能を持つ畳ですが、実は畳自体がそれほど湿度に強いわけではなく、湿度が高い環境に置き続けることで調湿効果が限界を迎え、カビやダニが発生してしまう原因にもなってしまいます。
そうならないためには、畳を定期的にメンテナンスしたり、湿気がたまりにくい環境に置いてあげたりする必要があります。

そこで、今回のコラムでは、畳に湿気が溜まりすぎないための対策についてお話していきます。
畳を長持ちさせるための秘訣にもなるため、ぜひ参考にしてください。

畳は自分で湿気を調節する機能を持っている


冒頭でも触れた通り、畳には湿度を調節する「調湿効果」があります。
これは、部屋の湿度が高い時は畳が湿気を吸収し、逆に部屋の湿度が低い時は畳が湿気を放出するというものです。
畳1枚につき、約500CC程度の湿気を吸い取る機能があると言われていて、部屋の湿度に合わせて湿気の吸収と放出を繰り返し、室内を快適な環境に保ってくれています。

さらに、湿度だけでなく、遮音性や断熱性、クッション性なども兼ね備えていて、部屋に畳を敷くだけでさまざまなメリットが得られます。
乾燥している冬にフローリングから畳の部屋に入ると少し空気感が違うように感じるのも、こういった効果が原因かもしれません。

調湿効果が原因でカビやダニが発生する


畳の持つ調湿効果は、それ自体が部屋の快適性を上げ、過ごしやすい環境を作ってくれる理由のひとつですが、状況によってはカビやダニが発生する原因になってしまうことがあります。

カビの原因は空気中に含まれている胞子。
カビもダニも気温が20度〜30度程度で、湿度が60%くらいのじめっとした環境を好みます。
そのため、畳がこういった環境を長時間キープし続けることで、畳にカビやダニが発生してしまいやすくなります。

■ い草が限界まで湿気を吸収している
畳が吸湿効果を維持しているのは、畳の材料となっているい草の効果。
い草は畳の表面に使用されていて、湿気に触れやすい環境にありますが、吸収できる湿気の量には限界があります。
梅雨の時期など、湿度が高い状況が長く続くと、湿度の吸収が限界を迎えてしまいます。
当然、い草は湿気を限界まで吸収し、湿った状態となってしまうため、そのまま放置するとカビが生えたり、ダニが発生したりする原因となってしまいます。

■ カーペットや布団などが敷きっぱなしになっている
畳は調湿効果を持っているため、直接上に敷物がある状態が続くと、湿度が高くなり過ぎてしまう可能性があります。
特に、布団の場合は人の寝汗によって湿度が高くなり、湿気をい草が吸収したまま蓋をされたような状態となってしまうため、湿度を放出できずに吸収できる湿度の限界を迎えてしまいます。
布団やカーペットをめくるとカビが生えてしまっていたり、ダニが発生してしまったりするのは、暗くてじめっとしたカビやダニが好む環境を、自ら作り出してしまっていることが原因です。

具体的な畳の湿気対策


畳にダニやカビを発生させないようにするには、定期的に部屋の環境を整えてあげる必要があります。
カーペットや布団を置かないようにしたり、一時的に湿度を調整してあげたり、畳のことを気遣ってメンテナンスするだけで畳にダニやカビが発生する原因を防いだりすることができるため、取り入れるだけで畳を長持ちさせることも可能です。

■ 空気を乾燥させる
畳から湿気を取るためには、空気を乾燥させることが一番です。
そのため、窓を開けてこまめに換気をしたり、湿度が高い日が続く梅雨の時期などにはエアコンを使って除湿するなどして、一時的に乾燥した状態を作ってあげることが大切です。
一度乾燥した状態になれば、ダニやカビが過ごしにくい環境となるため、簡単には発生しにくくなります。
そのため、1日に1回は窓を開けるなど、こまめに換気をするよう心がけましょう。

■ 畳の上に布団や敷物を置かない
布団やカーペットなどを、何日も継続して畳の上に起き続けると湿気が畳の中にこもってしまうため、ダニやカビが繁殖する原因となってしまいます。
なるべく畳の上にカーペットや布団などを敷きっぱなしにするのは避け、布団なら毎日たたむ、カーペットなどの敷物は定期的に干して畳の上を解放してあげるなど、畳と敷物、両方のメンテナンスを心がけるようにしましょう。

■ こまめに掃除をする
ダニやカビの原因となるのは、湿気だけとは限りません。
例えば、ホコリや食べこぼし、人間の垢や皮脂などを好んで食料とするため、掃除機をかけたり、雑巾で乾拭きするなどして、毎日少しずつでも掃除をしてあげることが大切です。
湿気を溜めない環境を作りながら、ホコリやゴミなどをこまめに掃除し、人間が快適な環境を整えてあげることが畳を長持ちさせる原因になります。
少し面倒くさいかもしれませんが、カビが生えてからだと元に戻すことは難しくなるので、そうなる前にこまめにメンテナンスするように心がけましょう。

畳を掃除する場合、可能であれば表面だけでなく畳の下側も掃除するようにしましょう。
とは言え、毎日畳をめくって掃除するようなことは難しいため、大掃除の時など、何ヶ月かに1回の作業で問題ありません。
裏側までしっかりと掃除し、乾燥させてから元に戻すことによって、表面だけを乾燥させた時に比べて湿気がとれた状態になります。
梅雨の時期をはじめ、じめっとした季節は特に、畳が湿気をためやすくなるため、こういったメンテナンスをするだけでも畳の調湿効果を正常に保てるようになります。

■ 吸湿剤を置く
梅雨時など、部屋の湿度が高く、換気だけではなかなか対処がし切れないという場合は、部屋の湿気を吸収してくれる「吸湿剤」を置くことです。
吸湿剤は、別名除湿剤とも言われますが、どちらも塩化カルシウムが入った容器のことを言います。
空気中にある水分を吸収し、ジメジメした部屋の環境を快適に保ってくれる効果があります。
ひとつでは足りない場合、個数を増やすことでより高い効果を発揮します。

湿気がよく取れるので、部屋を快適に保ってくれることが最大のメリット。
ただし、和室にマッチするものではないので、畳の上に置いてあると違和感があります。
また、梅雨時をはじめ、湿度の高い時期のための対策ではありますが、すぐに満杯になってしまうのでこまめに取り替えてあげる必要があります。
消耗品でもあるので、ある程度のコストがかかる点も把握しておきましょう。

■ 防湿シートを敷く
吸湿剤の交換が面倒だったり、部屋の景観を損ねるのが気になったりという理由で取り入れるのを悩んでいる方は、防湿シートを敷くのもひとつの方法です。
いったん畳をすべて剥がし、畳床の下に敷くことで湿度を吸収してくれます。
また、畳表と畳床の間に敷き込むことも可能です。竹炭を使った防湿シートなどは、調湿効果だけでなく消臭効果や遠赤外線効果も持っているため、より表面に近い方がシートの恩恵が受けられます。
ただし、畳表を一度剥がして中に敷き込むのは、畳屋に作業を依頼しなければできません。

防湿シートは湿気対策としてある程度の効果を発揮しますが、吸湿剤に比べるとやや効果が低く、畳のダニやカビ発生を防ぐことはできても、和室に置いてあるタンスの中や床の間の置き物までの効果は期待できません。
湿度の多い地域では、タンスの中や床の間には追加で湿気対策が必要となってくる可能性が高いです。

畳にダニやカビが発生してしまったら


もし、畳にダニやカビが発生してしまったらどうすれば良いのでしょう。
こうなってしまうと、今更湿気を取る、掃除をするといったことをやっても元の状態には戻りません。
発生してしまったカビやダニを取り除き、いち早く対処する必要があります。

■ カビが発生した時の対策
まず、畳にカビが発生した時の対処法について解説します。
対処法はカビの度合いによって少し異なるので、まずは「うすいカビが生えているのか」「黒カビが生えているのか」のどちらかをチェックしましょう。

① うすいカビが生えている場合
擦らなくても簡単に取れるうすいカビが生えている場合、掃除機などで吸い取ることが可能です。
この時、吸い取った掃除機がカビの胞子を放出してしまう可能性があり、より広い範囲にカビを繁殖させることにもなりかねないため、まずは部屋の窓を開け、しっかりと換気ができるように環境を整えた上で掃除機をかけましょう。

掃除機は目地に沿ってゆっくりとかけてあげるのがポイントです。
ある程度吸い取れたらエタノールやお酢(原液を約10倍程度に薄めたもの)をスプレーボトルなどに入れ、カビの生えている箇所に散布。
その後、たわしや歯ブラシなどを使って目地に沿ってこすり、カビをかきだすようにしましょう。
力を入れ過ぎず、優しく、たたみを傷つけないようにするのがポイントです。

② 黒カビが生えている場合
畳に黒カビが生えてしまったときは、最初に換気をすることは変わりませんが、うすいカビの時とは異なり、掃除機をかけないようにします。
黒カビが生えている部分に重曹粉末をふりかけ、その上からエタノールを散布しましょう。
その後は歯ブラシやたわしなどを使い、目地に入り込んでいるカビを掻き出すようにして取り除き、最後にぞうきんなどで拭き取りましょう。

それでも取りきれないくらい深刻なカビには、塩素系の漂白剤を使用しなければなりません。
ただし、塩素系漂白剤を使用すると畳が変色してしまう可能性が高く、カビ自体は取れたとしても畳の表面が不恰好になってしまう可能性が高いです。

畳にまだら模様ができるなど、不恰好になってしまうとカーペットを敷くなどして隠してしまう場合が多く、またカビが生えやすくなる原因となってしまいます。
後々のことを考えると、思い切って掃除のプロにメンテナンスをお願いすることをおすすめします。

■ ダニ発生時の対策
畳にダニが発生してしまった場合は、掃除機をかけたり拭き掃除をしたりして取り除くのが一般的です。
畳の種類にもよりますが、藁床を使った畳の場合、放置すると大量発生にも繋がり、健康的にも被害を及ぼしてしまう可能性が出てきます。

また、被害の拡大を防ぐには、毎日掃除機をかける、定期的に拭き掃除をする、畳をしっかりと乾燥させるなど、日々のメンテナンスが重要になります。
掃除機をかける際には畳の表面を傷つけないよう、目地に沿ってかけるようにしましょう。

こまめに掃除をすることでダニの発生をかなり抑えることが可能になります。
ただし、畳以外にもカーペット、布団やクッションなど、発生源がたくさんあることを考えると完全に0にすることはできないため、定期的にダニ殺虫剤を使うのも方法のひとつです。
スプレータイプの他、燻煙剤タイプの製品も販売されているので、状況に合わせて使い分けましょう。
また、ペットや小さいお子様がいらっしゃるご家庭は、殺虫剤の使用が影響を及ぼさないかを確認した上でご使用ください。

最近の畳はダニが発生しにくい?

ひと昔前の畳は製法として、畳床には藁を使用していました。もちろん、現在でも藁を使って畳を作ることは可能ですが、藁がダニの発生する原因となってしまうため、近年では別の素材に置き換えられることが多くなっています。
ダニの発生しない素材である建材ボードに発泡スチロールのような柔らかい化学物質を挟むことで、質感は藁と同じようなクッション性を実現させています。
そのため、近年では畳からダニが発生することはかなり少なくなっています。

ダニはカーペットや布団自体にも発生するため、日々のメンテナンスが必要なのは変わりませんが、畳床の素材を変えるだけで畳からのダニの発生を防ぐことができるため、交換を考えている方はぜひ参考にしてください。

湿気に強い畳もある?

冒頭でも少し触れた通り、畳にはい草のもつ調湿効果によって室内の湿度を調整してくれる効果があります。
一方で、い草を使っていない、樹脂系の畳や和紙畳であれば、調湿効果こそありませんが、その分湿度を溜め込み過ぎてしまう可能性も低くなります。
つまり、湿気でお悩みの場合、い草を使っていない畳に交換することが最大の湿気対策になります。

和紙畳や樹脂系の畳は使い勝手も良く、い草の畳に比べてカラーなども幅広いため、近年人気が高まっています。
湿度が原因でカビやダニの発生が発生する可能性も激減するため、気になる場合は、こういった種類の畳を選ぶのもひとつの方法です。

とは言え、カーペットやふとんを真上に敷き続けた場合、湿度が溜まりやすい環境になることに変わりはないため、カビやダニが100%発生しないということではありません。
あくまでも、い草の畳に比べて湿度を溜め込みにくいという程度なので、効果を過信し過ぎず、目的・用途に合わせて畳を使用することをおすすめします。
また、どんな畳であってもこまめに換気や掃除をすることで長持ちすることに変わりはないため、定期的にメンテナンスをするよう心がけてください。

「湿気対策で、張り替えを考えているけれど、本当に悩みが解消されるのか不安」
と いう方は、まずは今の状況も踏まえてご相談ください。
どういった畳を選ぶべきか、状況に応じてアドバイスさせていただきます。

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●このブログは私が書きました

川田 敦

一級畳制作技能士 川田 敦

畳職人として22年。
祖父の代から続く畳店で育ち、幼少期から畳がそばにある生活を送ってきました。28歳で畳店を継ぐことを決意。一級畳制作技能士の資格持ち、玉藻公園披雲閣など、文化財の畳工事から、一般住宅や賃貸住宅の畳工事まで幅広い仕事の経験を持っています。

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