川田畳製作所

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畳のメリット・デメリットは?い草や和紙・樹脂系畳の特徴も解説します

2024.03.01

日本で床材として古くから使われている畳。
近年では、日本家屋の建築は少なくなっていますが、モダンな家や洋風の家であっても和室を取り入れているケースも多くあります。
一方で、いまいち畳の魅力が分からない。
フローリングだけ方が良いのでは?
といった疑問も少なくないようです。

では、本当に畳はメリットが少なく、フローリングの方が良いのでしょうか。
今回は、畳のメリットやデメリットについて詳しく解説していきます。

畳とは


畳とは、日本独自の床材のこと。
い草を使った物が主流でしたが、現在では和紙や樹脂を使ったものなど、さまざまなタイプが登場しています。

畳の歴史は深く、古くは奈良時代、神武天皇が使用していたことが古事記に記されています。
最初は床材にござを重ねたり、1畳だけベッドのように敷いて寝具として活用したりしていたようです。
鎌倉時代から室町時代にかけて畳を部屋全体に敷き詰めるようになり、高貴な客人をもてなす客間として利用されるようになりました。

とは言え、畳は一般の人では使えない、高価な品。
時代劇でも、お殿様が一段高い畳の上に座り、家来が板の上に座るような姿が映し出されることがありますが、それくらい、畳は高貴な人にしか座れない高級なものだったということです。

やがて、桃山時代から江戸時代には茶道が発展し、数寄屋づくりの茶室が造られるようになりました。
江戸時代中期以降には一般家庭にも少しずつ普及するようになり、畳屋や畳師といった仕事も増えてきました。

その後、昭和の終わりまで1000年以上、形を変えることなく愛用されてきましたが、建物が洋風化してきたこともあり、和室のニーズが減ってきました。
これに伴い、さまざままなタイプの畳が登場し、現在では色や種類も豊富になっています。

畳のデメリット


畳にはデメリットが多く、人によっては「デメリットしかない」と思っている方も少なくないようです。
特に、よく出てくるデメリットは下記の通り。
実は、多くが「い草畳のデメリット」となっており、現代畳である和紙や樹脂系畳では解消されているものも多いです。
そのため、両方を比較しながら詳しくご紹介します。

  • 掃除などの手入れに気を遣う
  • メンテナンスにお金と手間がかかる
  • 湿気を吸いやすく、カビが生えやすい
  • ダニやシロアリなどの虫が湧きやすい
  • 傷や汚れがつきやすい
  • 和風のイメージにしかならない
  • 変色する
  • フローリングよりも費用が高い

掃除などの手入れに気を遣う


畳はい草という植物でできているため、かなりデリケート。
掃除機をゴシゴシかけていると表面が傷ついてしまったり、水拭きがNGだったりと、日々の掃除にも気を遣います。
その上、面倒くさがってメンテナンスを怠るとカビやダニが発生の原因になってしまうことも。
そのため、畳を傷つけないように気を遣いつつ、定期的に掃除をする必要があります。

POINT
「畳の目に沿って掃除機をかける」など、掃除のしかたについてはい草畳と現代畳とで変わりはありません。
ただ、和紙や樹脂系の畳の場合、い草に比べて耐久性が高く水にも強いため、かなりお手入れが楽になっています。

メンテナンスにお金と手間がかかる


畳の寿命はだいたい10年〜20年と言われています。
数年ごとに畳の表面のゴザのような部分を裏返して使ったり、新しく取り替えたりして使うため、交換にも費用がかかります。
5年に1回メンテナンスし、3回繰り返したら4回目に新しい物に取り替えるのが一般的な流れ。
そのため、長く使う場合でも、だいたい20年くらいで寿命が来ると言われています。

POINT
近年では、い草から和紙や樹脂系の畳になり、耐久性も上がっています。そのため、すぐに擦り切れてしまったり傷ついてしまったりすることは少なくなっています。
とは言え、畳床の耐久性に劇的な変化はないため、寿命が20年程度であることには変わりありません。

湿気を吸いやすく、カビが生えやすい


畳はい草でできているため空気中の湿度が高い時は吸収し、乾燥している時は湿気を放出する、調湿効果があると言われています。
ただ、い草自体は湿気に強いわけではないため、湿度が高いと湿気を吸収し過ぎてカビが生えてしまう原因になってしまいます。
そのため、定期的に換気をしたり、可能であれば外に干したりして乾燥させる必要があります。

POINT
和紙や樹脂系の畳の場合は調湿効果がなく、湿度に左右されることはありません。
また、湿気にも強いためカビが生える可能性も低く、い草に比べてメンテナンスが非常に楽になっています。

ダニやシロアリなどの虫が湧きやすい


畳の上に食べこぼしがあったり、こまめに掃除をしていなかったりすると、ダニが湧いてしまう可能性が高くなります。
さらに、床や柱がシロアリによって被害を受けている場合、その影響が畳にまで及んでしまうこともあります。
い草の畳は目の中に汚れが入ってしまうことも多く、掃除機をかけてもなかなか吸い出せないことがあります。
こういった汚れの中にはダニの餌になるものも多く、こまめに掃除をしないとダニが繁殖してしまう可能性が高いです。

ダニは一度繁殖すると畳の中に入ってしまうため簡単には駆除ができません。
さらに、隣の畳にも被害が出てしまうため、最悪の場合部屋全体の畳を交換する必要が出てきます。

POINT
和紙や樹脂系の畳は目が細かくダニが入り込む隙間がありません。
さらに、抗菌・抗ウイルス効果を持つ畳もあり、常に清潔な状態を保てるため、ダニやカビが繁殖しにくくなっています。
一方、シロアリはコンクリートすらも食い破ってしまう力を持っているため、和紙・樹脂の畳でも撃退することはできません。
とは言え、シロアリ被害を受ける場合、フローリングでも対策は難しいため畳だけのデメリットとは言えない部分もあります。

傷や汚れがつきやすい


畳は植物なので、タンスの角など、尖った部分が当たると傷ついてしまったり、擦り切れてしまったりする可能性があります。
一度傷ついてしまうとそこから損傷が広がってしまい、傷が目立ちやすくなってきます。
また、水やジュースをこぼすとすぐに浸透してしまうなど、汚れやすく手入れがデリケートな点をデメリットに感じている方も少なくありません。

POINT
和紙や樹脂の畳の場合、い草に比べると耐久性が高く、簡単に切れたり擦れたりしにくくなっています。
さらに、水やジュースをこぼしても浸透しにくく、湿気にも強いため安心です。

変色する


い草の畳は時間と共に色が変わります。
最初は淡い緑色だったものが、小麦色になっていき、最終的には黒ずんだ色になります。
この変色がい草の畳の魅力だったり、交換するタイミングの目安だったりするのですが、できれば新調したときの緑のまま使い続けたいと思っている方も多いよう。
そのため、色が選べる和紙・樹脂系の畳でも、新調した畳と同じ淡い緑を選ぶ方が多いです。

POINT
和紙・樹脂系の畳は日光によってやや変色はするものの、い草のような大きな変色は起こりません。
そのため、何年も同じ色のまま使い続けることが可能です。

和風のイメージにしかならない


畳といえば和の象徴のような印象で、近年の洋風の建物にはデザインを合わせにくいです。
特に、畳縁が付いているものは和のイメージが強く、和室として雰囲気を出したい場合は重宝されますが、洋室に合わせるのは非常に困難です。
とは言え、畳縁がないと畳が傷つきやすくなってしまうため簡単に外すわけにもいきません。

POINT
和紙や樹脂を使った最近の畳は耐久性が強いため畳縁がなくてもある程度の耐久性を確保できます。
畳縁をなくすことで見た目がそこまで和風に偏り過ぎないため、フローリングの部屋と合わせてもしっくり収まるデザインにしやすいです。
さらに、い草の色に限定されないため、白や黒、青など、さまざまなカラーの畳があります。

フローリングよりも費用が高い

新築住宅に設ける場合、畳はフローリングに比べて費用が高額になります。
さらに、メンテナンスや交換にもお金がかかるため「とにかく安くしたい」という方にとって畳の部屋はフローリングよりも費用を下げることは難しいです。

畳のメリット


畳のデメリットを多く紹介しましたが、ほとんどがい草の畳でのデメリットでした。
そのため、和紙や樹脂の畳を取り入れればある程度の内容は解消できそうです。
一方で、畳にはもちろんメリットもあります。
畳の部屋をうまく活用することで「和室を設けてよかった」と思える時間が増えてきます。
また、い草畳、和紙畳、樹脂畳など、種類によって異なるメリットもあるので合わせてチェックしておきましょう。

  • クッション性があるため転んでも安心
  • 休憩場所として便利に活用できる
  • 洗濯物をたたむ時やアイロンがけなどに便利
  • 来客時に客間として使える

クッション性があるため転んでも安心


畳はフローリングに比べてクッション性があるため、転んでも怪我をする心配が低いです。
そのため、子供が遊ぶ場所としても活用できる他、年配者が日々生活するスペースとしても安心です。
万が一倒れてしまった時にもケガのリスクを抑えることが可能です。

休憩場所として便利に活用できる

畳はフローリングと違ってそのまま寝転がることができるスペースです。
リビングやダイニングの場合、寝転がるならソファの上など、限られた場所になります。
そのため、畳の部屋はちょっと休憩したい時に気軽に寝転がることができる貴重なスペースと言えます。

洗濯物をたたむ時やアイロンがけなどに便利


畳の部屋は取り込んだ洗濯物をそのまま直置きしたり、アイロン台を持ってきてアイロンがけをしたりするのにも便利です。
アイロンをかけたワイシャツをそのまま畳の上に置いたり、することも可能です。
テーブルにアイロン台を置けば同じことはできますが、取り込んだ洗濯物の中には靴下などテーブルの上におきたくないものもあるため、畳の部屋を活用するのが最も便利です。

来客時に客間として使える

畳の部屋は来客時に客間としても活用できます。
布団さえ用意しておけば、普段は子供の遊び場や洗濯を干すスペースとして活用し、来客時には布団を出して活用してもらうことも可能です。
ベッドを固定で置いている寝室とは違い、布団を押し入れから出し入れする手間はあるものの、さまざまな用途に活用できる点は大きなメリットです。
畳の部屋をひとつ設けておくだけで、活用次第でさまざまな用途で利用できるため、フローリングだけの家に比べて生活の幅が広がります。

い草畳のメリット


い草の畳は和紙や樹脂に比べてデメリットが多い印象ですが、その分メリットも多くあります。
メンテナンスは大変ですが、好きな方にはそれでもい草の畳を選ぶ理由があります。

肌触りが良く心地よい

畳の最大の特徴は肌触りの良さ。
特に、い草の滑らかな肌触りや優しい弾力、質感などはどれを取っても絶妙。
和紙や樹脂の畳も、質感をできる限りい草に近づけることを目標としており、い草の畳以上のものは存在しません。
そのため、日本人のアイデンティティでもある心の落ち着く空間は、い草の畳の部屋にあるとも言えます。

フローリングに比べて夏涼しく冬暖かい


天然素材であるい草は、隙間にたくさん空気を含んでいます。
空気は熱が伝わりにくいため、畳自体が断熱効果を持っています。
そのため、床からの熱を遮断し、夏涼しく冬暖かい空間を保ってくれます。

い草の香りにリラックス効果がある

い草には天然素材ならではの香りがあります。
畳ならではの独特な香りには、フィトンチッドと呼ばれる心を鎮める作用があると言われていて、リラックス効果が期待できます。
寝転がっていると心地よくなってきてそのまま昼寝をしてしまうことが多いのは、畳の持つリラックス効果も一因と言えるでしょう。

防音効果がある

い草には音を吸収する効果があります。
そのため、フローリングの部屋に比べて騒いでも音が外に漏れにくくなっています。
クッション性があってダメージも吸収してくれるので、子供が走り回ったり大きな声で騒いだりしても、フローリングに比べて影響が薄くなります。

調湿効果がある

い草の畳には、湿度が高い時は湿気を吸収し、乾燥している時は湿気を放出する、調湿効果があります。
湿気の多い梅雨時に湿気を吸収し過ぎてしまうため、カビなどの被害でマイナスの印象が強いですが、調湿効果はうまく活用すれば快適な生活を約束してくれる天然のエアコンとなってくれます。

消臭効果がある

い草には、汗やタバコ、加齢臭など、さまざまな「臭い」を軽減させる効果があります。
例えば、焼肉をして部屋中に匂いが充満していると、フローリングの部屋だとなかなか匂いが抜けないことが少なくありません。
しかし、畳の部屋があれば臭いがキツめな食事をしても、翌日には匂いが気にならなくなっているという事例もあります。

和紙畳・樹脂畳のメリット


天然素材ではない和紙・樹脂系の畳は、い草の畳に比べるとメリットは少なめです。
ただし、い草の畳の持つデメリットの多くを解消しており、近年の住宅を中心に人気が高いです。
例えば、下記もその一例。

  • 色褪せしにくく変色が少ない
  • 水・汚れに強い
  • 耐久性が高く長持ちする
  • ダニ・カビが発生しにくい
  • さまざまな色が選べる

特に、丈夫で長持ちする点と、多くの色が選べる点、そして、耐久性が高い点などは純和風ではない近年の住宅にも合わせやすく、子育てをしている家でもい草ほど気を使うことなく生活できる点も魅力です。

畳のメリット・デメリットまとめ

畳はい草と和紙・樹脂系の畳でメリット・デメリットが大きく分かれます。
い草の畳はデメリットが多く、湿気に弱くカビやダニが発生しやすかったり、すぐに傷がついてしまうため手入れが大変な上、メンテナンスにもお金がかかる印象が強いです。
さらに、時間と共に変色してしまうことを不満に感じる人も多く、デザインも和風なので最近の住宅に合わないといった点も懸念点でした。

その点、和紙・樹脂系の畳は湿気に強くカビやダニの発生を防いだり、耐久性がアップしているためメンテナンスが楽になっていたりとい草の畳のデメリットが大きく解消されています。
変色も少ない上、選べる色の種類も豊富なので、フローリングにイメージを合わせやすい点もポイントです。

とは言え、い草の畳よりも和紙・樹脂系の畳が圧倒的に優れている訳ではなく、質感や弾力、香りなど、さまざまな面でい草にしかないメリットがあります。
さらに調湿効果や断熱効果、吸音効果やリラクゼーション効果など、さまざまな面で生活を快適にしてくれる効果を持ち合わせています。
そのため、それぞれのメリット・デメリットを把握しつつ、最も好みや目的に合った在廊を選ぶことが畳選びのポイントになります。

川田畳製作所では、畳に関するお悩みを随時受付中です。
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●このブログは私が書きました

川田 敦

一級畳制作技能士 川田 敦

畳職人として22年。
祖父の代から続く畳店で育ち、幼少期から畳がそばにある生活を送ってきました。28歳で畳店を継ぐことを決意。一級畳制作技能士の資格持ち、玉藻公園披雲閣など、文化財の畳工事から、一般住宅や賃貸住宅の畳工事まで幅広い仕事の経験を持っています。

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